4がつ29にち くもり
久々のmail、懐かしい名前。
バイトを終え、ケータイを手にする。mail受信を告げるランプが点滅している。
今度立ち上げるサークルのメンバーに、「映像作品の企画を早く詰めよーよー。」とmailを送った反応が来てるはずだ。
新着mail 1
予想に反した懐かしい名前が、そこにあった。
高3の終わり、それこそ受験真っ只中に付き合ってた彼女の名前。入学してからも一応続いてたけど、夏の終わりに僕がフラレた彼女。
だいたい恋の終わりはフラれる形で訪れるのだけど、珍しく「ちゃんと凹んだ」記憶がある。とはいっても、20時間くらいで立ち直って、違う女の子と『傷心飲み会』とかやってた気もするけど。
僕はいわゆる「釣った魚にえさをやらない」タイプの恋愛らしく、告白が成功するとギアが一段下がったり、テンションが落ちているらしい。
自分ではそんなつもりはなかったのだけど、たぶん「ペルソナ」が取れかかってそうなるんだと思う。油断して、気を抜けるからこそ、「つまらない」とか「わがまま」と思われる。
自分がわがままで自己中心的な人間だと多少なり知っているから、普段はそうとう厚いペルソナを被ってる。利己的な自分の反動のように、デキた可愛いイイオトコを演じてる。それも無意識に。
僕は、彼女のことがすきだった。もちろん、今も嫌いになった訳ではないけど。
とても背が高くて、脚が長くて、制服がやたら萌えで、タレ目だけどやたら大きくて、若干白GALで。顔の調子がいいときは、それこそ香里奈っぽかった。
…服のセンスは微妙だったけど。おそらく、そこにこだわるまでもなくモテたんだろう。スタイルと顔のチカラは偉大だ。
悔しかったり、全然時間を作ってくれなかった事に不満だったり、彼女ももっと大人だったら…と複雑な思いは今も抜けないけど。
だけど、僕がこうやって色々考えるようになったのも、「あの人」を傷つけてた事に気付いたのも、「あの頃の僕」に似ている彼女のおかげなのかもしれない。
彼女は今、「彼女と別れた後の僕」みたいな想いを抱くことはあるのかな?僕の後に、どんな人と付き合ったかにもよるか。
mailの内容は、『就職先が決まった』ってことだった。来年から、東京で研修らしい。きっと勤務先も関東圏になるだろうな。
「とりあえず、東京でも有名なくらい名前を売らないとな。卒業してからなんて云わずに、今度立ち上げるサークルの代表としてでも、早すぎるって事はないや。」
そんな事を、ふと思った。もともと目立ちたがりだし、名前を売るつもりではいたけれど。
相変わらず彼女は、僕に影響し続けてるのかもしれない。彼女に限らず、僕はいろんな女の子に支えられているみたいだ。